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「染司よしおか」五代目当主・吉岡幸雄氏が選んだ今月の色の過去の記事より、人気のエッセイを紹介しています。最新記事はこちらでどうぞ。

2010年1月
新しい年を迎える

蓼藍の葉の写真
松風 (「源氏物語の色辞典」より)

門松をたてて祝う。こういう日本古来のしきたりも、昨今はだんだんと薄れてきているようだが、やはり何をおいても古きよき習わしは、心に留めておきたいものである。

お正月に最もふさわしい彩はなにか。

やはり松の葉の色ではないだろうか。「マツ」という名称は、神が天からその樹に降りてくるのを『待つ』ところに由来しているといわれている。

自然の花草樹は四季それぞれにその姿や色彩を変えていくが、松はいつの時も青緑の葉をつけて何十年、何百年も風雪に耐えて、その姿を保っている。そして神が降臨して宿ることにより、それは長寿、節操、不変なものとして崇められてきたのである。それ故に、新しい年を迎える象徴とされ、松葉の彩りは長寿のために千歳緑 (せんざいみどり)、あるいは常に色を変えないため永劫不変なものとして常磐色 (ときわいろ)とも称されてきた。あたらしい希望にみちた年を迎えるのには、濃い青緑を称える松が相応しい。日本人は平安の昔からそう信じてきたのである。

京都御所、東京の皇居のまわりも松が数多く植えられているのもそれ故であろう。一月に雪が舞って松の樹に淡く白雪が積もる光景を見たいものである。今年の冬は、それらしく、凛とした寒さになって欲しい。

染織史家・吉岡幸雄

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