『王朝のかさね色辞典』
吉岡 幸雄 著
『王朝のかさね色辞典』
「菊の襲」より
王朝人たちの菊へのおもいはことのほか強かったようである。
襲の色目については『栄花物語』に「白菊」「移菊」「蘇芳菊」などの襲が登場し、「更級日記」には「菊の濃く薄き八つばかりに、濃き掻練を上に着たり」という作者の装いの記述がある。のちの時代にも「莟菊」「残菊」「葉菊」「九月菊」などの襲がうまれ、多種多彩である。
ただ、今日のように菊花の彩りが多様になり、花も大振りになったのは江戸時代中ごろをすぎてからの品種改良によってで、それ以前は野菊のような小さな花で、色も白、赤、黄の三種だったのではないかと私は考えている。
その裏付けとして、江戸初期の寛永文化の中心人物であり、王朝文化を探究していた後水尾院(1596〜1680)が、重陽の節句にあたり「白菊には黄色の綿を、黄色の菊には赤い綿を、赤い菊には白い綿を覆う」(「後水尾院当時年中行事」)と記していることからも、そういえるとおもう。
詳細は、吉岡幸雄著『王朝のかさね色辞典』にてどうぞ。
10月カレンダー付き壁紙
紫紅社刊『王朝のかさね色辞典』より植物染めによる作品を壁紙にしました (染色: 染司よしおか)。

お使いの画面の解像度に合ったサイズをお選びください。
お知らせ
2023年9月16日(土) 〜11月5日(日)
染織史家の吉岡常雄・幸雄親子のあくなき探究心と情熱により現代によみがえった、『源氏物語』にみる装束をはじめとした王朝の色彩を紹介する回顧展。
日本の伝統色 ミニ知識