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日本の伝統色100
太陽の朱 空の藍 光の山吹
吉岡 幸雄 著

『日本の伝統色100』序文(吉岡幸雄・著)

私は京都において、自然界で育まれた花や葉、実、そして樹皮、また土の中に伸びている植物の根などに潜んでいる色素を汲み出して、布や糸を染めるという、日本古来の染法を使った伝統染織を生業としている。そのため「色」についてあらゆることが勉強になるため、いつもまわりを注意深く見るようにしている。

第一のお手本は、自然の山野の木々の葉や季節を持って咲く花の美麗な色である。くわえて四季の移ろいがゆるやかなわが国の山の姿や野の景色のなかでも、わずかずつ色を変えていくその時々の風景を眼に留めておくことが、私の仕事にはなにより大切なことなのである。

日本には一千年あまり前に染められたり、織られたりした布帛が数多く遺されている。古典であるそれらは、もちろん植物染であるから、先人たちの優れた仕事をいくつも、何回も眼をこらして見ると、時代ごとに少しは変わっているかもしれないが、その奥底に麗しく深みのある彩りが存在する。

私が日本の古典の色彩にこだわるのは、単なる懐古趣味ではない。長い年月にわたって使われてきて、美しい彩を醸し出してきたものは、今もなお美しいのである。古きよきものも、新しくつくられたものも、いいものは光彩をいつまでも放ち続けるのである。

ところで、いまから百五十年ほど前、ヨーロッパで発明された化学染料はわずかな間に植物染料を席捲し、世界の多くの伝統的植物染は簡便な化学染料を前に廃れてしまった。日本でも細い流れがのこっているだけである。

一千年以上も前に染められた美しく、また高度な技術を施した染織を再現することは無謀だったかもしれないし、永遠に到達できないこともある。しかし私は、人類が自然界から採集した色で染めはじめて数千年以上の間、工夫と進歩を重ね、歴史を作ってきた天然染料の技を、わずか百五十年の化学染料に押しやられてしまうにはあまりにも残念であるし、伝統色を見る、そして染めて美しい色をあらわす機会を失ってはいけないと考えている。

そうした意味から、日本には一千年をはるかに越す歴史をもつ神社仏閣があり、そこには綿々と続く行事法会があって、大勢の人が集まる。私のような手仕事も、そこに息づくのである。

日本人は、こうした伝承から伝統の力を生み蓄え、その継続性の高さは誇るべきことであろう。

そして、人はなぜゆえ美しい彩りを求めて身の回りにおきたいと思うのか、ということを考えるとき、人は地球の自然と共に生活している。常日頃、眼にする色—太陽、空、山、海原、川、そしてそのまわりに生育する草樹など、自然のなかにあるものをあらわして身近におきたいと願っているのでは、と考えたのである。

つまり色彩を求めることは、自然への賛歌なのである。

ここに掲げた色見本は、そんな自然への賛歌をあらわしたものである。

赤系、青系、黄系を中心としたが、青系と赤系をかけあわせた紫色、青系と黄系をかけあわせた緑系、茶系、黒系の色もあわせて掲載した。

色相は無限にある、ということ、伝統の力を実感していただければ幸いである。

『日本の伝統色100 太陽の朱 空の藍 光の山吹』
「染司よしおか」吉岡幸雄

1月カレンダー付き壁紙

2014年 吉岡幸雄の仕事展「日本の暦・色かたち」(撮影: 齋藤芳弘) より、染司よしおかの植物染作品を壁紙にしました。

カレンダー付き壁紙サンプル画像

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