「染司よしおか」五代目当主、吉岡幸雄氏に毎月、日本の色にまつわる様々なお話をしていただくコーナーです。
寒さのなかでも、美しい彩りを見せてくれる花、それは梅や椿である。
椿は木へんに春と書くが、これは漢字ではなくて、和様、つまり日本人が独自に造りあげた文字だそうである。それは、椿が日本原産の植物であるからである。
寒さにふるえながら近くの山道を歩いていると、つやのある濃い緑の葉に、紅の濃い彩りの椿の花、またあるところには白く気品のある花が咲いているのを観ると、自ずから心がなごんでくる。
日本人には、四季それぞれ思いいれの花があるわけだが、私にとっては椿がなんともいとおしい。それは、私どもの染工房が四十数年前から奈良東大寺のお水取り、修二会の行のあいだ、二月堂におわす十一面観音にささげる、椿の造り花の染色をさせていただいているからである。
東大寺のお水取りは、春をむかえようとする旧暦二月の、重要な儀式で、国家の天下泰平、気候の風雨順次、五穀豊穣、そして万民の幸福を祈るものである。現在は、行は三月一日から十四日まで、東大寺二月堂で行われているが、その間、十一面観音の周りに、私どもが紅花で染めた和紙を、そこに参籠する練行衆自らが椿の花を形どった造り花をしつらえて、それを本当の椿の生木にさして、飾る。まさしく、春を迎えようとするときに、早春の花を供えるわけである。
私どもの工房では紅花の花びらから、真紅の色を染め出して、椿の花にふさわしい彩りとする。毎年この一、二月の間の寒い季節に行うのが、色がさえて美しい。
ときおり、散歩の折に麗しい椿の花を見ると、このように鮮やかな色に染められるようにと、自らをいましめるのである。

東大寺二月堂 修二会「椿の造花」
練行衆たちが紅・黄・白の和紙で椿の造花を作る
末摘花 (すえつむはな)
紅花は、茎の先端 (末) に咲く花だけを摘み取って染料にするので、昔は紅花を「末摘花」と呼んだ。これは、『源氏物語』6帖の題名でもある。この帖の主人公は「末摘花」と呼ばれる姫君である。
(紫紅社刊「虹色どろぼう」より)
「紅花レーキの作り方」より
紅花を顔料 (レーキ) 化したものは、豆汁で溶いて友禅の紅挿しに用いるほか、京紅など化粧用、菓子の色付け、高血圧の特効薬としても使われています。
(紫紅社刊「自然の色を染める: 家庭でできる植物染」より)
関連リンク:
「日本の色辞典」吉岡幸雄 - 色名解説の決定版!
「虹色どろぼう」染司よしおかの植物染
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椿 (カレンダーなし)
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