「染司よしおか」五代目当主、吉岡幸雄氏に毎月、日本の色にまつわる様々なお話をしていただくコーナーです。
門松をたてて祝う。こういう日本古来のしきたりも、昨今はだんだんと薄れてきているようだが、やはり何をおいても古きよき習わしは、心に留めておきたいものである。
お正月に最もふさわしい彩はなにか。
やはり松の葉の色ではないだろうか。「マツ」という名称は、神が天からその樹に降りてくるのを『待つ』ところに由来しているといわれている。
自然の花草樹は四季それぞれにその姿や色彩を変えていくが、松はいつの時も青緑の葉をつけて何十年、何百年も風雪に耐えて、その姿を保っている。そして神が降臨して宿ることにより、それは長寿、節操、不変なものとして崇められてきたのである。それ故に、新しい年を迎える象徴とされ、松葉の彩りは長寿のために千歳緑 (せんざいみどり)、あるいは常に色を変えないため永劫不変なものとして常磐色 (ときわいろ) とも称されてきた。あたらしい希望にみちた年を迎えるのには、濃い青緑を称える松が相応しい。日本人は平安の昔からそう信じてきたのである。
京都御所、東京の皇居のまわりも松が数多く植えられているのもそれ故であろう。一月に雪が舞って松の樹に淡く白雪が積もる光景を見たいものである。今年の冬は、それらしく、凛とした寒さになって欲しい。

松風 (「源氏物語の色辞典」より)
松葉色 (まつばいろ)
松の葉のような、濃い黄緑色。色見本は蓼藍と刈安の掛け合わせで染めたもので、これより藍を濃くすると木賊色になる。
(紫紅社刊「日本の色辞典」より)
「松風」より
嵯峨嵐山の地は現在でも、愛宕山を背景に幾重にもなだらかな山の連なりがみえて魅了される。なかでも嵐山の陵線に突き出たような松の姿が夕陽に照らされて陰影をつくる風景は格別である。
(紫紅社刊「源氏物語の色辞典」薄雲より)
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