紫という色は、古代より、洋の東西を問わず高貴な色とされてきました。中国・前漢の武帝(在位BC141~BC87)は紫を好み、天帝の色として「禁色(きんじき)」とし、また今から3600年前の地中海の海洋国家フェニキア人は、アクキガイ科の貝のパープル腺から取り出した液を集めて布に染めつけました。1グラムの色素を得るには2000個もの貝が必要だったそうです。日本でも、聖徳太子が制定した「冠位十二階」においてもっとも高位とされたのは紫でした。
高貴な色であるとともに、妖艶でもある紫。その魅力はミステリアスです。
紫の色名には、「深紫(こきむらさき)」「帝王紫(ていおうむらさき)」「紫鈍(むらさきにび)」「江戸紫(えどむらさき)」「藤(ふじ)」「滅紫(けしむらさき)」「二藍(ふたあい)」「杜若(かきつばた)」「似紫(にせむらさき)」「葡萄(えび)」「茄子紺(なすこん)」「脂燭(しそく)」などがあります。
紫系の色の染料
代表的な染料として、紫草があります。紫草はムラサキ科の多年草で、6月ころに可憐な白い花をつけます(上写真)。しかし紫の色素はその根(紫根・右写真)にあるのです。その根をよく乾燥させて石臼で搗いて砕き、湯の中でよくもみこんで色素を抽出します。いまでは生産量が少なくなり、たいへん貴重な植物、色となっています。
また、二藍という紫の色は、蓼藍で青く染め、それに紅花の赤をかけて紫色にします。かつて藍という言葉は染料を総称する名でした。そして5世紀ころ紅花が呉(くれ)の国から渡来したので、「呉藍、くれのあい(くれない)」と呼ばれたのです。そこで、この青の藍と赤の藍の二つをかけあわせることから二つの藍、二藍と称されるようになったのです。
『源氏物語』を象徴する色・紫。聖徳太子の冠位十二階以来、最上位の色として崇拝されてきました。官位一位の色「深紫(こきむらさき)」は紫根で何日もかけて深い紫に染めた高貴で贅沢な色です。
植物染により日本古来の鮮やかな色文化を再現することに挑戦し続けている、「染司よしおか」の吉岡幸雄氏と福田伝士氏の情熱を追った映画が制作されました。(予告編を見る)
伝統色の完璧な色標本と色名解説
「日本の色辞典」吉岡幸雄
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